伊万里焼の基礎知識│佐賀の窯元巡り&価値の見分け方と購入ガイド
この記事を書いた人
足立 美桜
まだ3年の査定歴ではありますが、大学では美術史を専攻し、前職では画商にいた経緯もあり、特に絵画と彫刻の査定に長けています。公正で確かな目でお客様の大切なお品物を一点一点丁寧に査定しています。
「伊万里焼を本場佐賀の窯元で購入したい!」「伊万里焼の歴史や価値が知りたい。」
日本の伝統的な焼き物である「伊万里焼」。
その美しさは世界中で高く評価され、多くのコレクターを魅了してやみません。
本記事では、これから伊万里焼について知りたいという方のために、基礎知識から奥深い魅力までご紹介します。
また、記事の後半では、伊万里焼の購入や売却を検討中の方の為に、佐賀県の窯元とおすすめの買取業者をご紹介していきます。
是非、最後までご覧ください!
関連記事:伊万里市のおすすめ買取店舗TOP5|伊万里焼・鉄スクラップ買取も
1:【基礎知識】伊万里焼について学ぼう!
では早速、伊万里焼の誕生の歴史や発展、多様な様式について解説していきます。
伊万里焼への知識を深めて、窯元巡りや購入の際にお役立てください。
1-1:そもそも伊万里焼きとは?
伊万里焼とは、佐賀県有田町を中心に作られている磁器の「総称」です。
その誕生は17世紀初頭まで遡ります。
当時、伊万里港から日本各地や海外へ積み出されていたことから「伊万里焼」と呼ばれるようになりました。
初期の伊万里焼は、白磁に藍色で絵付けを施した「染付」と呼ばれる様式が主流でした。
その後、技術革新や海外との交流によって、色鮮やかな「色絵」や金彩を施した「金襴手」など、様々な様式が生まれていきます。
特徴としては、以下の点が挙げられます。
■白磁の美しさ: 原料となる陶石の質が良く、透き通るような白い肌が特徴です。
■精巧な絵付け: 熟練の職人によって描かれる、繊細で美しい絵付けが魅力です。
■多様な様式: 時代や窯元によって様々な様式があり、奥深い世界が広がっています。
1-2:歴史的価値の高い「鍋島焼」
鍋島焼は、伊万里焼の中でも特に高級とされる磁器で、江戸時代、佐賀藩の鍋島家が藩の威信をかけて作らせました。
そのため、一般には流通せず、大名などへの贈答品としてのみ用いられました。
特徴としては、高い技術力に基づいた精巧な作りと、上品で洗練されたデザインが挙げられます。
青磁や色絵など、様々な技法が用いられましたが、中でも「鍋島様式」と呼ばれる独特の様式が確立されたことは特筆すべき点です。
1-3:400年前に誕生した「古伊万里」
「古伊万里」は、江戸時代に伊万里港から全国へ運ばれた伊万里焼の総称です。
現代では、明治時代以前に作られた伊万里焼を指すことが多いです。
古伊万里は、その時代の流行や需要に応じて、様々なデザインや技法が生まれました。
初期には中国の影響を受けたシンプルなデザインが多かったですが、次第に日本独自の美意識を反映した華やかで繊細な作品が増えていきました。
1-4:伝統を受け継ぐ「有田焼」
有田焼は、佐賀県有田町で作られる磁器の総称であり、古伊万里の伝統を現代に受け継いだものです。
その歴史は、伊万里焼の誕生と発展と密接に関係しています。
現代においても、有田焼は日用品から美術工芸品まで幅広く作られており、国内外で高い評価を得ています。
伝統的な技法を守りながら、現代のライフスタイルに合わせた新しいデザインにも積極的に取り組んでいます。
2:伊万里焼との出会い!佐賀の窯元巡り
伊万里焼の魅力をより深く味わいたい方は、ぜひ佐賀県内の窯元を訪れてみましょう。
窯元では、職人の技を間近で見学できるだけでなく、ギャラリーで作品を鑑賞したり、実際に購入したりすることができます。
お気に入りの一点との出会いを求めて、窯元巡りに出かけてみませんか?
本章では、伊万里焼の窯元の巡り方やアクセス、イベント情報などをご紹介します。
2-1:秘窯の里・大川内山
有田内山は、佐賀県有田町にある歴史ある窯元街です。
江戸時代から続く石畳の道沿いには、現在も多くの窯元や工房が軒を連ね、伊万里焼の伝統が息づいています。
窯元巡りの魅力は何と言っても、作り手の想いやこだわりを肌で感じられることです。
工房の見学では、土作りから成形、絵付け、焼成まで、一つひとつの工程に込められた職人の技と情熱を目の当たりにすることができます。
また、ギャラリーでは、伝統的な様式から現代的なデザインまで、様々な作品を鑑賞することができます。
作家や窯元の方と直接お話ができる機会もあり、伊万里焼への理解を深めることができます。
さらに、窯元で購入するメリットとして、市場価格よりもリーズナブルな価格で手に入ることが挙げられます。
お気に入りの作品をお得に購入できるチャンスです!
下記ホームページでは、各窯元ギャラリーの住所や特徴、マップなどが掲載されています。
大川内山を訪れる際には、是非参考にしてください。
■伊万里鍋島焼協同組合窯元一覧
- 伊万里焼せいら
- 光山窯
- 冬山窯
- 大五郎窯
- 大秀窯
- 太一郎窯
- 小笠原藤右衛門窯
- 巒山窯
- 青山窯
- 文三窯(三宅製陶所)
- 泰仙窯
- 瀬兵窯
- 瀬貞陶窯寛右エ門
- 玄太夫窯
- 畑萬陶苑
- 福岡大五窯
- 螺山窯
- 鍋島御庭焼窯
- 鍋島虎仙窯
- 長春青磁陶窯
- 陶咲花窯
- 魯山窯
■参照:秘窯の里「伊万里大川内山」伊万里鍋島焼協同組合
2-2:毎年多くの人で賑わう「有田陶器市」
毎年ゴールデンウィークに開催される有田陶器市は、日本最大級の陶器市として知られています。
約4kmにわたる通りに、400軒以上の店が軒を連ね、県外や海外から訪れる多くの観光客で賑わいます。
有田焼はもちろん、伊万里焼や波佐見焼など、様々な焼き物が販売されるほか、掘り出し物が見つかる「窯元蔵出し市」や、伝統芸能のパレードなど、イベントも盛りだくさんです。
2-3:職人技を間近で見学!「窯開き」
窯元によっては、「窯開き」と呼ばれるイベントを開催しているところもあります。
窯開きとは、窯で焼成した作品を一般公開するイベントのことです。
普段は見ることのできない窯の中を見学できる貴重な機会です。
また、作り手から直接作品の説明を聞くこともできます。
2-4:自分だけの器を作ってみよう!「陶芸体験」
旅の思い出に、自分だけのオリジナル作品を作ってみませんか?
多くの窯元では、陶芸体験を開催しています。
初心者の方でも、職人が丁寧に指導してくれるので安心です。
ろくろ体験や絵付け体験など、様々なコースがあります。
伊万里焼に関するイベント情報は、以下のサイトでチェックできます。
■参照:佐賀県観光連盟公式サイト
■参照:有田観光協会公式サイト
イベント情報は随時更新されるので、お出かけ前に最新の情報を確認しましょう。
3:本物を見極める!伊万里焼の4つの鑑定ポイント
伊万里焼は、その歴史と希少性から高値で取引されることも多く、残念ながら偽物が出回っているのも事実です。
せっかく手に入れるなら、本物の伊万里焼を選びたいですよね。
本章では、偽物をつかまされないために、知っておきたい伊万里焼の鑑定ポイントをご紹介します。
3-1:本物と偽物の見分け方
伊万里焼の真贋を見極めるのは、専門家でも容易ではありません。
しかし、いくつかのポイントを押さえておくことで、偽物を掴むリスクを減らすことができます。
①胎土と釉薬
伊万里焼の胎土は、白くきめ細かいのが特徴です。
偽物は胎土が粗かったり、色がくすんでいたりすることがあります。
また、釉薬の光沢や質感も重要なポイントです。
釉薬は経年変化によって作成時よりも柔らかな光沢に変化します。
古伊万里なのに光を強く反射している場合は、製作から日が浅い偽物である可能性が高いです。
②絵付け
伊万里焼の絵付けは、熟練の職人によって施された手描きです。
筆使いや色の濃淡、絵柄の構図など、細部までよく観察しましょう。
偽物は、絵付けが雑だったり、印刷のように均一だったりすることがあります。
③高台
高台とは、器の底にある円形の台のことです。
高台の形状や削り方、釉薬のかかり具合なども製作された時代の鑑定に役立ちます。
古い時代の伊万里焼は、高台が小さく、高台内に砂が詰まっていることがあります。
3-2:柿右衛門様式の伊万里焼
柿右衛門様式は、初期伊万里の50年後の1660年代に生産された古伊万里です。
「柿右衛門赤」と呼ばれる深い赤色が用いられた鮮やかな色合いと細かい装飾が特徴で、磁器には花鳥風月の絵柄が多く見られます。
柿右衛門様式の伊万里焼は、他の様式と比べて、白磁の白さに特徴があります。
一般的な伊万里焼の白磁は青みがかった白色であるのに対し、柿右衛門様式は「濁手(にごしで)」と呼ばれる、乳白色の温かみのある白が特徴です。
これは、素地に使われている陶石の違いによるものであり、柿右衛門様式を見分ける重要なポイントになります。
■画像参照:ARITA EPISODE2 – 400 YEARS OF PORCELAIN. NEW BEGINNING.
3-3:金襴手様式の伊万里焼
金襴手様式の伊万里焼が誕生したのは、17世紀後半、江戸時代中期のことです。
最大の特徴は、やはり金彩の輝きです。
本物の金を用いているため、光沢や輝きが違います。
また、金襴手様式では、金彩だけでなく、赤や緑・青などの鮮やかな色絵も特徴的です。
これらの色絵は、上絵付けという技法で施されており、他の様式と比べて発色が鮮やかで、深みのある色合いが楽しめます。
金襴手様式では、牡丹や鳳凰、龍といった縁起の良いモチーフや、草花や風景など、様々な文様が描かれています。
これらの文様は、非常に繊細で、高度な技術によって描かれていることが分かります。
以上のポイントを踏まえ、全体的な雰囲気や質感なども考慮しながら、金襴手様式の伊万里焼を見極めてみましょう。
■画像参照:前坂晴天堂
3-4:裏印の有無
伊万里焼の高台内にある裏印(落款・陶印)は、歴史的価値を示す大切な証です。
例えば、裏面に「福」が描かれたものは、現在柿右衛門窯が商標登録しており、価値が高い伊万里焼である可能性があります。
有名な窯の伊万里焼にはこのようにサインがあり、裏印から判別されます。
中には世界観を踏まえて敢えてサインがない作品もありますので、裏印がないからといって価値が無いわけではありません。
4:伊万里焼の相場一覧【2024年最新版】
「伊万里焼って素敵だけど、高価そう…。」 そんな風に思い込んでいませんか?
確かに、人間国宝の作品や、一点物の美術品ともなると、数十万円、数百万円といった高額になるケースも少なくありません。
しかし、現代における伊万里焼は、決して手の届かないものではありません。
若手作家や窯元の中には、日常使いしやすい価格帯で作品を提供しているところも多くあります。
例えば、シンプルなデザインのマグカップであれば、3,000円~5,000円程度から、少し凝ったデザインの湯呑みや小皿でも、5,000円~10,000円程度で購入できる場合もあります。
もちろん、作品に使われている素材や技法、作家の知名度などによって価格は大きく変動します。
本章では、現在の伊万里焼の相場について詳しく解説していきます。
4-1:コレクターからの需要
伊万里焼の相場はコレクターの減少・高齢化から年々下落の傾向にあります。
しかしながら、そば猪口などの上等品は若手コレクターが存在することから、未だ相場は大幅に下落していません。
伊万里焼を本格的に収集するなら今が絶好のタイミングと言えるでしょう。
4-2:伊万里焼の相場
最後に、伊万里焼の購入を検討中の方の為に、最新の相場をご紹介いたします。
■明治期 伊万里焼 山水図 染付 湯呑2客 ¥4,500
画像参照:ラフジュ工房
■幕末〜明治 伊万里焼 蛸唐草文染付 蕎麦猪口3個セット ¥8,000
画像参照:ラフジュ工房
■明治期 伊万里焼 色絵染付 蓋茶碗3客 ¥8,800
画像参照:ラフジュ工房
■幕末〜明治期 伊万里焼 金襴手 色絵 染付 花桃文 5.4寸皿 約16.5cm ¥9,600
画像参照:ラフジュ工房
■幕末〜明治 伊万里焼 花鳥図色絵花瓶一対(花器) ¥24,000
画像参照:ラフジュ工房
まとめ
400年以上の歴史を持つ伊万里焼は、その美しさ、そして実用性から、時代を超えて多くの人々に愛されてきました。
現代では、伝統を守りながら、新しい感性を吹き込んだ作品も数多く生み出されています。
伊万里焼の伝統を守り、未来へと繋いでいくためには、私たち一人ひとりの意識が大切です。
実際に作品に触れてその魅力を感じたり、窯元を訪れて作り手の想いに触れたりすることで、伊万里焼への理解を深めることができます。
そして、お気に入りの作品を見つけたら、ぜひ日々の暮らしに取り入れてみてください。
伊万里焼のある暮らしは、きっと、心豊かなものになるはずです。
さあ、あなたも伊万里焼の世界に触れてみませんか?